あの国の本当の思惑を見抜く 地政学
多数派の「正しさ」に違和感をもったときに読みたい3冊
「みんながそう言っているから、正しいんだろう」——そう自分に言い聞かせて、モヤモヤを飲み込んだ経験はありませんか。
作家・川代紗生さんが選ぶのは、そんな"静かな違和感"に、正直でいさせてくれる3冊。
国際情勢の「常識」、パンデミックの「正解」、そして女性への「当たり前」。多数派の「正しさ」にふと立ち止まりたくなったとき、そっと寄り添ってくれる言葉に満ちています。
「地政学」って、こういう学問だったのか!と読めば読むほど目から鱗が落ち、ページをめくる手が止まらない1冊。
そもそも地政学はどうやって生まれたの?世界情勢がどうなると地政学へのニーズが高まるの?など、これまでの地政学ブームについても掘り下げてくれているので、地政学、勉強してみたいけど難しそうだな、わたしに読めるかな……と不安な人にも、入門書としておすすめです。
「なぜ戦争は起こるのか?」という問いへの答えをずっと見つけられずにいたのですが、この本を読んで理解が深まった気がします。 海に囲まれた国なのか、陸に囲まれた国なのか。それによって各国の主義主張も、哲学も変わる。地理環境が似ていると同じ問題が起こりやすい、というのも面白い発見でした。
各国それぞれの守りたい「正義」はいかにして生まれたのか。そのきっかけがわかります。世界情勢を俯瞰して読み解きたいときにぜひ。
2020年2月。未知のウイルス——新型コロナウイルスについての情報が出はじめた頃のことを、今でも鮮明に覚えています。
どれくらい危険なのかも、どうやって対策すればいいかもわからない。世界中の誰ひとりとして正解を知らないなか、最前線——「フロントライン」で戦った人たちのすがたを描いた作品がこの『フロントライン』です。実話をもとにした小説です。
厚労省の要請を受け、ダイヤモンド・プリンセス号に乗りこんだ災害派遣医療チーム「DMAT」の人々を中心に、船に隔離された患者たち、船の客室乗務員など、それぞれに光を当てています。未曾有の危機に翻弄されながらも、目のまえの人たちを助けようとしたプロフェッショナルたちの言葉に、姿勢に、読むたび、胸を打たれます。 何が正しいのかなんてわからない。もしかしたら自分の選択が、あとになって「間違っていた」と言われるかもしれない——。それってものすごく怖いことです。それでもまえに進むと決めたリーダーと、そのリーダーを信じると決めた仲間たち。そして最前線で戦う彼らを待つ家族。あの瞬間、懸命に生きた人々の、恐怖と向き合う覚悟をした瞬間の人間の美しさを、とても誠実に描いた作品です。
力をこめて書いたわたしの恋愛小説です。
以前、地元の小料理屋に行ったとき、そこでホールスタッフとして働いていた60代くらいの女性がいました。
そこにいた客のひとりが、彼女に、当然のように「お母さん、注文いいですか?」「お母さん、お勘定お願いします」と声をかけていました。その光景を見たとき、妙に息苦しくなったのを覚えています。
その人が「お母さん」じゃない可能性だってもちろんある。結婚も出産もしていないかもしれません。けれども老齢の女性にたいしなんのためらいもなく「お母さん」と呼ぶ文化は日本にはたしかに存在するのだという事実に、胸が締めつけられるような気持ちになったのです。
歳を重ねている女性は、子供がいて当然。「お母さん」的なケアをしてくれて当然。もしわたしが子供を産まなかったとしても、将来、こんなふうに「お母さん」と呼ばれたりするのだろうか。女性だからというだけで、他者から無邪気に母性を求められたらそのとき、わたしはどうすればいいのだろう。
そんな、日常のさまざまな瞬間に感じた違和感から、物語をふくらませました。
「結婚、出産してない人って、やっぱりどっか欠けてるよね」——そんな社会の視線に息苦しくなったときに読んでほしい1冊です。
川代紗生
1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。書店員時代に恋愛観や人生観を率直に描いた文章で支持を集め、エッセイ集『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)を出版。その後、『元カレごはん埋葬委員会』(小社)で小説家デビューを果たす。


