からだの厚みを薄くする
「横から見た自分」にドキッとする人へ
“からだの厚み”の正体と薄くする3ステップ
この記事でわかること
からだの「厚み」は、じつは体重や脂肪の量だけで決まるわけではありません。カギは、理学療法士が明らかにした「厚見え」と「脂肪浸潤」という2つの原因。仕組みさえつかめば、体重を落とさなくても“横のシルエット”は変えられます。
友人と並んで撮ったグループ写真。SNSでうっかりタグ付けされた一枚。あるいは、電車の窓ガラスに反射した横顔。イメージのなかの自分と違う姿を突きつけられ、言葉にしづらい違和感が胸をよぎる。「あれ、私こんなに厚かったっけ?」と。
多くの人が、年を重ねるにつれて感じる「なんとなく、全体がもったりしている」「今まで来ていた服が似合わない」――そんな小さな憂鬱をもたらす“厚み”の正体と、対処法をひもときます。
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それは「太った」ではなく、“別の問題”かもしれません
体重計の数字はさほど動いていないのに、肩や二の腕、背中に余分な“貫禄”がのっている気がする。集合写真が憂鬱、何気なく撮られた写真にがっかりする。あえて自分のカメラで撮り、加工してからみんなに送る――そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。
この「横姿の厚み」は、体重や体型という物差しだけでは説明しきれません。むしろ“見えているのに見過ごされてきた死角”。そして不思議なことに、いざ口に出してみると「実は私も」という声が次々と返ってくる、多くの人に共通する悩みでもあるようです。その広がりについては、記事の最後にお話しします。
「厚みって、結局なんですか?」を、理学療法士に直接ぶつけてみた
「この厚みの正体を、専門家に聞いてみよう」。そう考えて話をうかがったのが、理学療法士の土屋元明(つちやげんめい)先生です。
土屋先生は、筋肉・骨・関節の働きと「姿勢・歩き」を専門とする理学療法士。エコー(超音波診断装置)をいつも携帯し、肩や全身の組織・脂肪・血流・筋肉を“実際に見ながら”評価するスタイルで、医学的・科学的な裏づけをとことん大切にすることで知られています。臨床データと文献をもとに先生が示してくれた答えは、「体重を減らせば解決する」という私たちの思い込みを、やさしくほどいてくれるものでした。
突き止めた答えは、「2種類の厚み」だった
先生いわく、からだの厚みは「厚見え(あつみえ)」と「脂肪浸潤(しぼうしんじゅん)」という、2つの現象が重なってできています。
「厚見え」──姿勢からくる“見た目だけの厚み”
ひとつめの「厚見え」は、日々の姿勢そのものが生み出す見た目の変化です。肩が前に入って巻き肩になり、つられて背中が丸まって猫背に。この姿勢が習慣化すると、筋肉や筋膜の「滑走性(かっそうせい)」――組織どうしのなめらかな滑り――が失われ、動きを失った組織どうしは1つの塊となって分厚い状態で動くため、実際の脂肪の量以上に“厚く”見えてしまう。これが「厚見え」の招待です。
この見立ては、リハビリの現場で共有されている知見とも一致すると言います。筋膜や筋肉が癒着(ゆちゃく)して滑走性が下がると、動きが制限されこわばりが起きることは、理学療法の分野で広く知られています(※1)。さらに、猫背や巻き肩は見た目の印象年齢を大きく左右し、「数歳老けて見える」と美容・整体の現場でもたびたび語られます(※2)。逆にいえば、姿勢と組織のしなやかさを取り戻せば、“厚み”は見た目のうえで「解消できる」ということです。
「脂肪浸潤」──筋肉に脂肪がしのび込む“質の変化”
もうひとつの「脂肪浸潤」は、筋肉の“質”が下がり、本来なら筋肉があるべき場所に脂肪が入り込んでしまう現象。これは気のせいではなく、加齢とともに筋肉が「量」だけでなく「質」も変えていく、実際に起こるからだの変化です。しかもその入り口は、多くの人にとって40〜50代。誰にでも静かに始まりうるものです。
筋肉内に脂肪がたまっていくことは、研究でも裏づけられています。名古屋大学と早稲田大学の共同研究では、超音波画像で筋肉内の脂肪(筋内脂肪)を計測し、これが多い人ほど筋肉がやせ細り、立ち座りといった運動機能が落ちていることが確認されました(※3)。土屋先生がエコー越しに日々目にしている光景と重なります。見た目の厚みの奥で、からだの“中身”も変わり始めている。だから厚みは、美容だけの話ではなく、からだからのメッセージでもあるのです。
エビデンスの補足:筋肉内への脂肪の蓄積には、ビタミンD不足をはじめ生活習慣の影響も指摘されています(国立長寿医療研究センターほか)(※4)。それは裏を返せば、毎日の姿勢やからだの使い方しだいで働きかけられる余地がある、ということでもあります。
まずはセルフチェック。“横に出る厚み”は4タイプ
『からだの厚みを薄くする』が照準を合わせたのは、数ある厚みのなかでも「ここが厚いと、老け見えにつながる」4か所。たくさんの“気になる声”をもとに厳選された部位です。土屋先生と制作陣が、思わずクスッとしてしまうネーミングをつけているのもポイント。さて、思い当たる「厚み」はありますか?
ふけ山うなじ……うなじの後ろがぽっこり盛り上がって、“ふけて”見える厚み
布団背中……背中に布団を一枚のせたような、もったりした厚み
地滑り胸……胸全体の位置が下がって、崩れたように見える厚み
貫禄肩……肩から二の腕にかけて、“いらない貫禄”をうむ厚み
どれも造語ですが、鏡の前で「あ……」とうなずく方も多いはず。ちなみに「貫禄肩」は、デスクワークで猫背がクセになりがちな男性にも当てはまりやすいところです。
ケアは1回6分以内。迷わず進める3ステップ
「毎日のケアは続かなさそう」と身構える必要はありません。本書のメソッドは、どの部位も6分未満で完了します。柱になるのは、こわばった筋肉・筋膜の滑走性を呼び戻す“ほぐし”。ストレッチのように心地よく、道具もいらず、毎日でも続けられる内容ばかりです。
進め方は、①自分の厚みのリスクをチェック→②厚みをほぐす「横断マッサージ」で滑走性を回復→③足りない筋力を補う、というシンプルな3ステップ。「何を・どの順で・どれだけ」に迷わない設計なので、運動が得意でない人でも無理なく始められます。とくに姿勢由来の「厚見え」は、こわばりをゆるめて姿勢を整えると、その日のうちに変化を感じることもあるのがうれしいところ。いっぽう「脂肪浸潤」は一日で消えるものではありませんが、毎日のほぐしと軽い筋力ケアで“これ以上ためこまない”からだづくりを後押しできます。
これは“やせる本”ではありません。ねらいは「マイナス7歳の横姿」
ひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。本書は体重を1kg落とすための本ではありません。目標に据えているのは、数字ではなくシルエットを変えること。姿勢のクセだけでも見た目の印象は数歳変わるといわれ、そこへ「脂肪浸潤」の厚みが重なれば、横姿の印象年齢はさらに上がってしまいます。「厚見え」と「脂肪浸潤」の両方に手を打ち、「やせる前に、薄くなる」をかなえましょう。
「まるで私のこと」──社内から静かに広がった共感
最後に、冒頭で触れた“共感の広がり”の話を。この本の製作中、ゲラ刷りがコピー機の上に置かれていたとき、一人の女性が担当編集者のもとへそっと近づいてきて、こう言ったそうです。「ごめんなさい、冒頭のマンガ、つい読んじゃって。……これ、私のことみたいで本当にびっくりして」。
担当編集者が「自分だけの経験」として綴った心のモヤモヤは、実は多くの人が声にせず抱えていたものかもしれない。「これほど社内で声をかけられた本は初めて」と40代後半のベテラン編集者が驚くほど、静かな共感が集まっていると言います。写真に写る自分の姿にこっそりため息をついたことのあるあなたにも、きっと寄り添うことができる一冊。まずは気になる1か所――たとえば「ふけ山うなじ」から、鏡の前で試してみてはいかがでしょう。
出典・参考
にしぎふ整形外科リハビリクリニックほか、理学療法分野における筋膜・滑走性・癒着に関する解説
美容・整体の現場で語られる、猫背・巻き肩と印象年齢に関する指摘
名古屋大学総合保健体育科学センター・早稲田大学 共同研究「高齢者の筋肉内への脂肪蓄積はサルコペニアと運動機能低下に関係する」(2017年)
国立長寿医療研究センター「ビタミンDの骨格筋に対する新たな作用を発見」ほか
※本記事は、Voicyチャンネル「SUNMARK VOICE」2026年7月4日(土)放送回(第2編集部・橋口英恵担当)の内容をもとに、書籍紹介として再構成したものです。
からだの厚みを薄くする
【目次】
・「厚く見えるワケ」は2つもあった!
・若い頃より太っても痩せても、「厚み」に悩む人がいる
・「厚見え」は普段の姿勢がまねいている!
・「滑走不全」が肉塊のモト
・滑走不全を改善するセルフケアで厚みが解消するワケ
・筋肉の質が落ちると、脂肪が入り込む
・筋肉の曲がり角は40歳!?
・厚みと皮下脂肪はほぼ無関係!?
・40代から、脂肪浸潤は誰でも起こりやすくなる


